というわけでキマイラも倒したことだし、ちょっくら次の階層を見ていくぞ。 | |
やっぱり早く街に戻りませんか? 次の階層にどんな敵が出てくるかわからないじゃないですか。 | |
確かに一理ある、というかそれが普通だ。 | |
いや、お前ら樹海磁軸の存在を忘れてないか? | |
いや、忘れたわけではないが。 | |
あー、もしかして階段登ってすぐ当たりにあったりする? | |
……所謂お約束ね。 | |
ま、そういうことだな。 |
木々が……赤い? | |
へー、こんなところもあるんだー。 | |
こんな色にもなるんだ。 | |
ああそっか、ここいらじゃ一年中木が枯れずに繁っているんだっけ。 | |
……エトリアは違うの? | |
ていうかエトリアには真っ青な樹海もあったしな。どっちかっつーとそっちの方が非常識だけどよ。 | |
私はエトリアの迷宮については疎いのだが、一体どうなっていたのだ。今後の参考のためにも聞いておきたいのだが。 | |
あー、さっき言った奴の他に木々があらかた枯れていて大地も砂漠化してるところもあった。こっちも相当階層毎に環境が違ってくるかもしれねーな。 | |
あ、あれって樹海磁軸じゃないですか? | |
おぅ、そうだ。しばらくここらの景色を眺めていたい気もするけど、とっとと戻るか。 | |
……そんな感性があったのね。 | |
何気に痛いぞ、その台詞。 |
えーと、やらないといけないことが結構あるんでこっからはちょっと別行動な。とりあえず俺はミッションの報告をしてくるけど、誰か買い物に行っといてくれないかな。メディカとカリンの分の武器と全員分の防具。 | |
……私も武器が欲しいんだけど。 | |
じゃあ、買出しは私たち二人でやっておこうか。 | |
ところで所持金がまた底を尽きそうなんだけどさー、っていうか 64 エンしかないんだけどさー、どうするのー? | |
さっきキマイラがドロップした物を売っ払えばいいだろ。あと報奨金が出るだろうから、金のことはそんなに気にするな。 | |
僕は…… | |
冒険者ギルド、だろ? ちゃんとベオウルフの連中のことを伝えとけよ。つーわけだ、用事を済ませたらフロースの宿屋で落ち合おう。 | |
あれ、ボクってもしかして留守番ってことー? じゃー先にチェックインしとくねー。 | |
じゃ、一旦解散! |
で、各自用事は済ませてきたと思うんだが、ユーリ、何で宿屋の前でポツンと座ってんだ? | |
あのねー、宿代が値上がりしてた。そういえばどんどん値上がりしてくなーとか思ってたけどさー、まさか本当に足りなくなるなんて。 | |
う、これは私たちが悪いのか? 折角だから可能な限りよい装備を揃えて来たのだが。 | |
……やっちゃった。 | |
えーと、冒険者ギルドで新しく「ペット」を登録できるようになったんですけど…… | |
今はそれどころじゃねえな。とにかく、宿代をどうにかしないといけねー。 | |
あの女将さん、いい人っぽいですから少しぐらい大目に見てくれたり…… | |
何言ってんの、世の中金なんだよー? あの女将さんだって、より稼ぐためにああやって愛想を振りまいてるだけかもしれないんだよ? というかそうじゃなかったらキマイラを討伐したギルドを叩き出したりしないよ。 | |
そ、そんな。いくら何でもそれは…… | |
残念だが真実だ。まあ、正しく言えば世の中金でどうにでもなると思ってる連中とか、面倒くせえと思ったら金でどうにかしようとする連中がわんさかいるってことだ。だから次から次へとクエストが舞い込むわけだ。そうそう、ついでに言っとくとそれに食いつく俺たちも同じ穴のムジナだからな、よく覚えとけよ。 | |
うう……。 | |
それにしてもこの宿代の値段は何なのだ? パーティの平均レベル×パーティの人数ぐらいの計算式で宿代が膨れ上がっているのだが、一体どういうシステムなんだ。 | |
実はエトリアも同じシステムだったんだ。ちなみにとある情報筋から聞いた話じゃ、エトリアで宿屋が開業する前には一晩 5,000 エンぐらいまで値上がりする予定だったらしいぞ。流石に圧力がかかってポシャったらしいけど、ここまでくると暴力バーと何が違うのか俺にはわからん。 | |
そういえば、キマイラからのドロップを売ったら何やら凄そうな武器がストックされたのだが、キマイラ討伐の報酬を合わせても買えなかった。あれも一体どういうことなのだ? この調子では今後のレア系武器が大変なことになると思うのだが。 | |
あー、やっぱりここの商店もボルタック商会の一員だったか。 | |
? | |
よーするに、ボッタクリだ。というかだな、世界樹に依存してる地域ってのは値付けが凄まじくデタラメなんだ。極稀にトチ狂って原価よりも安い値段で売り出したりするけど、基本的に壮絶な搾取を始めるからな。ギルド結成時に言っただろ、装備品の金策で苦労するって。 | |
交易所の子、そんな風には見えなかったんだけどなあ。 | |
だからそういうところに騙されるなって。そのうちどこぞの萌漫画か何かみたいな台詞を言ってくると思うけどな、くれぐれも騙されるなよ。特にお前は免疫なさそうだからな、マジで気をつけろ。気がつくと貢クンになってたりするからな。 | |
そんなこと言うってことは、じゃあもしかしてユーロニモスはエトリアで…… | |
そうだったのか (笑) | |
……意外 (笑) | |
ああそうだよ、騙されたよ! しょうがねーだろ、褐色で下乳でボクッ娘という最終兵器っぷりだったんだから。オマケになぁ、時々店に入ると「おかえり!」とか言ってきて、俺たちが迷宮を踏破したときなんて……お前らに俺の気持ちがわかるかー!! | |
うーわ、まるで酔っ払いオヤジみたい。 | |
えーと、その、安全そうなクエスト受けてきます。 | |
私も一緒に行こう。というか、この場に居たくない。 | |
……ユーリ、任せた。 | |
うん、任せてー。って、ちょっとー!? |
あ、この「青い碑」は安全そうじゃないですか? 2F あたりで済みます。 | |
そうだな。ところでお前はアイツの事を不審に思っていないか? | |
え? | |
明らかに私たちと公宮のものを遠ざけようとしているだろう? 私はこれが不審でならない。 | |
……何か隠し事があるよね。 | |
そういえば、エトリアではいろいろあったようで、それと関係があるのかも。エトリアでの事についてはいつか話すとか言っていましたけど。 | |
一体何を話すつもりなのか知らないが、警戒しておいた方が良さそうではないか? | |
うーん、でも悪い人には見えないんですよね…… | |
……案外、さっきの女性問題だったり。 | |
(笑) | |
そうだったら私は遠慮なく怒るぞ (笑)。そんなことで気を揉ませられるなんて、たまったものではないからな。 | |
……そんなことより、早く宿代を稼いで帰ろ? |
みんな酷いよー、こんな (検閲削除) と二人っきりにしてー。 | |
悪いとは思ったのだが、正直引いてしまって……。 | |
宿代は稼いできましたから……。 | |
……謝罪の言葉は? | |
……俺が悪かった。いくらなんでも取り乱しすぎた。 | |
ところで公宮への報告の結果をまだ聞いていないのだが、報酬の他に何かあったか? | |
えーと、なんつーか引き続き迷宮の探索を続けてくれと言われた。あとどうにも連中は第2階層以降はろくすっぽ探索出来てないらしい。 | |
え? じゃあこの先は他のギルドや公宮の人達、助けになってくれたりできないんですか? | |
いや、俺らが探索をするのと平行して連中も探索するはずだから、既にある程度の部隊は派遣されて調査もされているだろう。エトリアの時はそうだったし、多分ここでも同じだろう。ただ、あくまでも俺たちが正式ルートを見つけて突破していくってことになるかな。 | |
つまり今まで通り探索していけば OK ってこと? | |
平たく言えばそうだな。ところで相変わらず金が無いのだが、少し稼がないか? 多分ここから先はモンスターの攻撃がさらにえげつなくなってくるから、回復アイテムをいくらか多めに用意しておいた方がいい。 | |
でもクエストはあらかたやってしまいましたよ。 | |
…… F.O.E.? | |
いくら何でもそれはないと思いたいのだが。 | |
ビンゴ。というわけで、 3F にいたカマキリ野郎を狩りにいくぞ。 | |
お前は何を言ってるんだ。 | |
前に挑んだときは全然ダメだったと思うんですけど。 | |
キマイラ倒せたんだから大丈夫だろう。いや、大丈夫に違いない。そもそもあの時はレベルがせいぜい 9 だったけど、今は全員 17 あるだろ。 | |
うーん、じゃー大丈夫かなー。でもあいつの落とすアイテム次第でしょ、稼げるかどうかって。 | |
エトリアには奴と同種の奴が居たんだけど、そいつは通常ドロップも条件ドロップもかなりの値段だった。何せ通常ドロップも 900 エンしたからな。うまく攻略出来ればいいカモになるぞ。 | |
……それなら話は別。 | |
……キマイラ戦での戦術の有効性を再度確かめてみるため、ということで納得しておくよ。 | |
どうだ、やっぱり世の中金だろー? というわけで、一晩休んだら樹海で集合だ。 |
というわけで戦いを挑んだのだが、まず奴の攻撃は間違いなく腕技だ。つまり、俺がアームボンデージで封じに成功すれば奴はタダの木偶に成り下がるわけだ。 | |
そんなに上手くいくものか? 失敗したら大変な事になるだろう? | |
なので、ユーリには聖なる守護の舞曲を先にかけてもらう。多分、これで即死はしないはずだ。今回は手持ちのアイテムが乏しいから、カリンも攻撃に回ってくれ。 | |
私が攻撃しても雀の涙だと思うのだが……まあ、やらないよりはいいか。 | |
……私は? | |
俺とユッカに鬼力化をかけた後は防御と回復に専念してくれ。ユッカはいつも通りチャージショットだ。 | |
了解。 | |
よし、作戦開始だ。なに、そんなに不安になるな。いいか、俺たちは強い、負けるはずが無い、なぜなら俺たちは強いからだ! | |
(大丈夫かなあ、本当に) |
アリッサさん! | |
……後は任せた。 | |
幸い、俺らアタッカーには鬼力化がかかってる状態だ。問題は、効果が切れるか倒れるかするまでにどんだけダメージが通るかだ。 |
どうやら次は俺の番らしいな。 | |
勝てる……のか? | |
多分、大丈夫だ。ここまでに俺たちが二度も攻撃を外さなきゃ、ケリは付いてる算段だったんだが。 | |
あ、僕がさっきチャージショットを外したから……。 | |
気にすんな。それよかこっからは殆ど運勝負だ。 |
奴の残り体力は……厳しいな。 | |
もうダメかも……。 | |
いや、まだ勝機はある。お前に直撃がいかなければ倒しきれるはずだ。おそらく奴はお前の攻撃後2〜3発で倒れるはず。その間、私だけが攻撃を受けつづければ…… | |
そんな! | |
いや、それしかないんだ。我侭言ってないで照準を定めるんだ。 | |
……了解。 |
※この後ユッカだけが生き残って勝利したんだが、途中でデジカメの電池が切れやがって劇的な勝利の瞬間を撮り逃しちまった。
いやー、なかなか上手くいかないもんだな。 | |
勝ったには勝ったけど、ユッカ以外全員お陀仏だったじゃん。 | |
…… Wiz ならリセットものね。 | |
しかし最後に残ったのが私でなくて良かった。私にはあいつを倒しきるだけの力は無いからな。ユッカはキマイラ戦に続いての MVP だな。 | |
…… | |
ん? どーした? | |
どうしたもこうしたも、こっちは一人残されてあいつと戦う羽目になったんですよ? 生きた心地がしませんでしたよ。隣でカリンさんが倒れたときは、本当にダメだと思いました! そもそもキマイラよりも明らかに硬くてダメージが通った気がしなくて、でも僕は明らかに一撃で倒される状態で…… | |
いや、確かに後衛だけを残してぶっ倒れたのは悪かったけどよ…… | |
……本当に、もう、ダメなんじゃないかって…… | |
ハイハイ、男の子なんだからメソメソするんじゃないの。それよりもほら、ドロップアイテムを売った収支が知りたいよー。 | |
……そうね。 | |
ユーロニモスの話では、私たちの治療費を差し引いても 600 エン弱の収益だったはずだ。 | |
…… 389 エン。 | |
思ったよりも少ないな。 | |
でもドロップアイテム自体は 700 エン程度で売れたんでしょー? | |
いえ、売却価格が 389 エンでした。 | |
……え? | |
ちょっと待て、それでは殆どプラスマイナスゼロということになるぞ。どういうことだ、説明してくれ。 | |
……悪い、これは俺も計算違いだった。マジでそれなりの値段で売れるだろうと思っていた。くっそー、生態系どころか経済もおかしいのか、ハイ・ラガードは? | |
いや、おかしいのはお前だ。 | |
……謝罪と賠償。 | |
ていうかその時間使って地道にザコを狩ったりアイテム収集していた方がずっと効率いいし。 | |
たった数十エンの稼ぎのために、僕がどんな思いをしたと思っているんですか!? | |
えーと、いや、その、マジでスマンかった。 |
まああれだ、こういうチョンボもあっての冒険だ。そういうことにしておいてくれ。とりあえず話を進めよう。 | |
ところでさっき、なけなしの金をはたいて眠りの鈴を買っていたが、一体何をするつもりだ? | |
さっき酒場でクエスト受けたじゃん? 何か逃げ回るモンスターをとっ捕まえて皮剥いでくれって奴。ありゃあ十中八九こっちから逃げる F.O.E. だと踏んで、それで買っておいた。 | |
そういうことかー。じゃあ、あそこでちょろちょろしてる奴がそーじゃないー? |
というわけで相変わらずのバックアタックで倒した。多分普通に追いかけようとするとそれなりに苦労するんだろうけど、まあこれが俺たちのやり方だからな。とっと先にいこうぜ。 | |
それよりさー、このピンボケとか構図が斜めってるとか、いい加減にどうにかならないのー? | |
中の人はカメラの扱いが絶望的に下手なんだ、そこはもう勘弁してやってくれ。 |
ところでユーロニモス、そろそろスキルポイントを振り分ける時期に来ていないか? キマイラ戦からレベルが 3 もあがっているのだが。 | |
うーん、ボクもそう思うんだけど、それはとりあえず 6F をあらかた探索してからでいいかなー。 | |
……まだこの階層に何があるかわからないしね。 | |
それもそうだな。 | |
いや、とりあえずユッカのスキルだけ振っておこう。三属性ショットを一通り取ってくれ。 | |
そんな中途半端な取り方でいいんですか? | |
キマイラ戦の初戦でわかったんだけど、どうもお前のは物理攻撃 (突属性) に術式属性の性質を与えるらしい。だから多分、 Lv1 でもそれなりには役に立つはずだ。勿論それだったらユーリの序曲サイクルでもいいんだけど、いかんせんそこまで遠い。それにそろそろ術式属性を条件にした条件ドロップも集めていかないと装備品が揃わなくなってくるかもしれない。そして何より、条件ドロップは条件さえわかれば大抵落とせるからな。資金繰りという面でも効果はあるだろ。 | |
そういえば条件ドロップ、あんまり集まっていな……ムググッ | |
(静かに……! 物音を立てるんじゃない) | |
(……これまた想定外だ) |
(別にこちらを狙っているわけでは無いようだ。とりあえずこの場をやり過ごせば……) | |
(い、息が、で、きな……) |
カリンさん、酷いですよ。いきなりチョークスリーパーしてくるなんて。 | |
いや、すまない。何分急な事だったのでな。しかしユーロニモス、やはりお前にとっても想定外だったのか? | |
ああ、完全に想定外だ。 | |
一体何が想定外なのー? そりゃあ、 F.O.E. が突然現れてビックリしたけどさー。 | |
……マップに映ってなかった。 | |
へ? | |
そういうことだ。いつもの F.O.E. なら、一旦通ったことのあるマップ上でその位置が確認できるんだ。ところが、さっきの奴はまったくわからなかった。完全に気配がないんだ。今のところ、目視するしか方法がない。 | |
こいつは予想以上に厄介だぞ。こまめに F.O.E. の姿を確認して、そうして移動ルートを確定させないといけねえ。 | |
もしかしたら私の「知覚」でマップ上に位置を投影できるかもしれない。その場合、私はもう少しアタッカーになれるまで時間がかかるのだが。 | |
いや、とりあえずここは一旦保留して先に進もう。多分、この階程度なら目視しつつでも突破できないようなギミックが仕掛けられてはいないはずだからな。それよか、この階層が一体どういう方向性の敵で占められているのか先に調べて、スキルの習得はそれからだな。 |
どうやらここから上の階へ上がれるようだ。すぐ戻る、少しだけ見てくる。 | |
むー、こっちは抜け道を見つけたんだが、どうにもこっちからじゃ通れねえな。 | |
でもこの先へ通じそうな道、どこにもありませんでしたよね? | |
いや、迷宮の中はいろいろと入り組んでるからな。ほら、今までにも鍵のかかった扉が何ヶ所かあっただろ? | |
あー、あったねそんなの。そういうもんだと思って、特に気にしてなかったけど。 | |
そういうとこから妙なルートが開けていたりするんだよ。特に扉を開けた先にその階層にいるべきでない強敵がいることもあるからな。 | |
みんなー、どうやら上の階は上の階で相当厳しいようだ。どうにもダメージ床がそこかしこにあるらしい。一旦戻って戦略を立て直した方が良さそうだ。 |