シナリオ及び世界観について

シリーズ初の本格的なシナリオ分岐が採用された本作。筆者は前作までの一周で遊びきれるボリュームとゲームデザインを評価していたのでその点は若干微妙ではあったが、前作までの企画・開発に深く関わっていたランカースが開発したWiZmans Worldが同じく一周で遊びきれるゲームであったこと、そもそもアトラスはシナリオ分岐のRPGを作ってきたことを考えると、元の芸風に戻ったと言えるか。

シナリオについて

プレイヤーパーティ一が真ラスボスである禍神に挑む理由を物凄く大雑把にまとめてしまうと

なのだが、罪の意識ほど強力に人間を縛る物はないと思うので、個人的には海都ルートが一番しっくり来る。海都ルートは海都の人物が好きでもない限り、あまり冒険を進めるモチベーションにはならなそうである。

そしてハッピーエンドらしい真祖ルートは、実のところしっくりこない。その理由を以下に示す。またあらかじめ書いておくと、筆者は善悪二元論が大嫌いである。

初代からの積み残し

初代のシナリオでは「モリビト相手の選択肢のなさ」が問題点として指摘されている。流石にコミュニケーション可能な知的生命に対して問答無用で殲滅作戦をかます選択肢しかないのはどうよ、ということらしい。メタな視点からすれば「だってゲームが進まないじゃん」なのだが、確かにそういうメタな視点なしなら、その場でゲームオーバーになるとしても選択肢を与えておいてもバチは当たらなかったであろう(筆者としては、大罪を冒した者たちがその罪に見合うだけの「何か」を求めて彷徨う、あるいは真実に辿り着くためには多大な犠牲が必要になるという話が好きなので、あまり不満はなかったのだが)。

この初代で提示された「人間とは違う知的生命とのコンタクト」はシリーズに一貫して出てくるモチーフなのだが、初代は単に殲滅の対象でしかなかったのは前述の通り。それではIIではどうだったのかというと、シナリオに彩りを添える脇役のような存在だったというのが正直なところで、敵対関係などにならない一方で、モリビトほど深くプレイヤーにコミットしてきたとは言い難い。

そしてIIIではフカビトがまず敵として描かれ、その後フカビトの真祖が人類とフカビトの共存は可能なのかという些か唐突な問いかけをしてくるのだが(筆者はその時点では停戦協定でも考えているのかと思った)、そのフリに対してのオチが「真祖を倒して禍神を倒す」なのは、ちょっとフリとオチが合っていない。かつて自分を敵ではない存在として扱ってくれたグートルーネへの礼として白亜の供物を授け、そしてプレイヤーに立ちはだかることで真祖としての勤めを果たし、自分を倒した存在に対して自分たちの神に挑ませるということなのだろうが。

ただ、最後の独白にある「……これで滅びを避ける道が開かれた」がかなり気になるところで、この時点で滅びそうになっていたのは一体何なのだろうという疑問が沸く。真祖が倒された以上は滅びそうなのはフカビトな気がしなくもないが、その前の時点で滅びに近かったのは人類側である。そして冒険者が禍神に倒されたとしても、真祖を失ったフカビトの状況が好転するかというと疑問である。かといって真祖は人類全体に関しては思い入れなどなく、単にグートルーネ個人だけを思っていたようにしか読めない。

となると、やはり前述の解釈を少し拡大して、「冒険者が禍神を倒せれば、グートルーネは絶対に守られる。倒せなかったら知らん、真祖である自分に出来るのはここまでだ」という風に思っておくのが良さそうな気がするが、そういう一方の種族の一方的な自己犠牲というのは、やはりバランスを欠いている。

果たして世界樹は味方なのか

しっくりこない理由はもう一つある。世界樹の迷宮シリーズでは、世界樹は単純に人類を利するだけの存在であるという以外の解釈も可能となっており、例えば初代の世界樹は世界の浄化装置ではあっても人類の守護者ではまったくなく、それゆえヴィズルを操って決して世界樹のコアに人類を近づけなかった、という風にも読み取れる。IIの世界樹に至っては普通に狂気の王の実験施設のような存在とした方が素直な解釈である。

そういった設定を踏襲すると、IIIの世界樹は利害関係の一致で人類に益をもたらしているだけの存在であり、利害が一致しなくなったらどうなることかわからない存在である。その事に目を瞑って禍神だけを倒してハッピーエンドというのは、あまりにも楽観的過ぎる。深王などは洗脳されていたのではないにしろ、機械の体を得る過程で記憶操作ぐらいはされているはずで(世界樹のテクノロジーを考えると偶発的な事故というのはお粗末過ぎる)、そういうことをする相手を果たして信頼できるかというとまず無理であろう。

かつて人々を疫病から救った白亜の供物に関しては、必ずしも世界樹由来とは言いきれない部分が多々あるのもややこしい。どうも世界樹と白亜の供物は独立した存在と思っても良さそうである。

また、前作までの真ラスボスは迷宮の奥に封じられた強大な化け物という解釈が出来たが、禍神に関してはそれ以外の解釈の方がむしろ素直で、どちらかというと世界樹の領域を侵食する存在と思うのが一番しっくりくる。なので素直にとれば世界樹⇔禍神という対立軸に人類が巻き込まれ、世界樹に付く代わりにテクノロジーを得たという解釈がもっとも簡単なのだろう。

……が、それでいいのか? 世界樹は世界樹で何考えてるかわからなくないか?

などといったあたりが気になりすぎるので、どうにも「禍神を倒した! 人類は救われた!」とは思えないのが本音である。

世界観について

というか世界樹についてなのだが。初代の世界樹は世界樹計画の産物、前作の世界樹は箱舟計画の副産物のようなものという代物で、今回の世界樹はまたそれらとは別物……つまり、三作通じて世界樹という存在はあるものの、それらの由来は同一ではないと解釈するのが極めて妥当な解釈であろう。これなら話の齟齬・矛盾はまず起こらない。

が、筆者はあえてエクストリームな解釈を試みる事にする。そもそも本編自体がエクストリームプレイに片足を突っ込んでいたのに、世界観の解釈で日和ったりしたら片手落ちであろう。以下の解釈は都合の悪い情報が一個出てきたらその場で瓦解する、ゲーム本編で出てきていない情報を勝手に山のように補間した上での解釈である。世間一般ではこのような行為を陰謀論と呼ぶのだが、どうせゲームの話である。捏造と曲解を活用しようではないか。

エクストリーム解釈の目的

この解釈の主張は、「三作は全て数年内の出来事であり、三作通じて世界樹の起源は関連があり、真ラスボスにも関連がある」である。ちなみに公式の設定資料等は一切読んでおらず、純粋にゲーム内の情報だけを元に、以下の解釈は書かれている。こういっては何だが、公式の設定と数光年は乖離しているだろうという自覚はある。

各種の時系列

確実にわかっているのは、I→IIという時間の流れである。これはIIで最初に迷宮の見つかった場所としてエトリアの存在が触れられていること、IIのとあるクエストで世界樹Iの第6階層の存在まで踏み込まれているらしいこと、この二つから明らかである。

前二作とIIIの時系列はイマイチ不明であるが、確実にわかっているのは

この二つだけである。

時系列がイマイチはっきりしないので、ここで無理やりI→IIIという時系列を確定させる。ここではIIとIIIの時系列は一旦脇にどけておく。

そのI→IIIの根拠であるが、これは三竜討伐で出てくるリンドヴルムである。まずリンドヴルムは明らかにモリビトのような風貌なので、こいつはモリビトだとする。モリビトが普通に人権を獲得して人類と共存していると考えると、これはもうIの後と考えた方がよい。III→Iの間に数百年単位で時間経過、その間にモリビトは地上から姿を消して迷宮を守る任についたというよりは、Iの冒険が終わった後、プレイヤーパーティなどの尽力によりモリビトの生き残りが地上で生活できるようになったと思った方が幾分マシな解釈であろう。

単なるファンサービスのカメオ出演キャラを根拠にしている時点でかなり問題があるが、ここでは大まかな時系列として

を仮定する。そしてそれらの間の時間の流れであるが、ゲーム内の情報からは、I→IIは長くて数年程度と思った方がよいであろう。これはクエストの会話から読み取れる。

次にI→IIIであるが、例えばIの冒険終了→IIIの冒険開始で百年以上の時間経過がある場合、世界樹シリーズの世界の技術水準を前提としても、Iの迷宮の話が絶対に世界中に広まり、海都の人間もそのことを知っているはずである。そしてIIIでIの迷宮への言及がなかったことを考えると、Iの話はIIIの大異変以降の出来事であり、またIの冒険はIIIのプレイヤーパーティが迷宮に辿り着く遅くとも数年前には終わっていたと思った方が適切であろう。この時点で設定可能なパラメータは、I→IIIの間の時間経過であり、数年〜数十年程度の幅となる。

次にIIとIIIの時系列であるが、II→IIIであれば殆どまったく何も制約条件は発生しない。IIの第6階層までの冒険が終わり、そしてプレイヤーパーティがアーモロードに辿り着いた。以上である。

これがIII→IIだと制約条件が発生する。まずI→IIが数年程度のタイムラグと考えると、I→III→IIもその中に収まる必要がある。そして当然だがIIではIIIの迷宮の存在は言及されていないので、IIIとIIは実はほぼ同時並行だということになる。そしてこの場合、また三竜がその制約に関わってくる。氷嵐の支配者のイベントで出てくるウェアルフはどう考えてもIIのパラディンのあの人を下敷きにしている。となると、IIIのエルダードラゴンの試練はIIでオーバーロードが倒されるずっと前に起こっていることになる。なぜなら、それ以上時間がずれるとウェアルフは地元のハイラガードで三竜と戦えば良かったからだ。そしてこうなるとIIでIIIの世界樹の存在が知られていない理由も説明がつく。IIの時点でハイラガード出身者でアーモロードにやってきたのはウェアルフ程度の者で、そのウェアルフは死んでしまっているからだといえる。

別にどちらの解釈でもいいのだが、ここではよりエクストリームな(=無理のある)「I→III→IIだがIIとIIIはほぼ平行」を採用する。この場合は大航海クエストのスキュレーがどうなることかと思われるかもしれないが、スキュレーはスキュラのもじりであり、神話モチーフなので普遍的、ゆえに無関係としてしまってよいだろう。

次にIで迷宮発見から迷宮踏破(フォレストセル撃破)とIIでの迷宮発見から迷宮踏破(始原の幼子撃破)までの時間軸だが、後者については作中のクエストでプレイヤーパーティーが到着する数年前から迷宮の探索がなされたいたことが明言されているので、IIはその時を起点とした数年以内の話であろう。

ところでIIでIが最初に迷宮の見つかった場所と言及されているので、Iで迷宮が見つかったのはさらにそれより前であろう。また、作中でモリビトの少女が遥か太古に人間とモリビトの間で盟約が結ばれたこと、そのことを人間側が知らないという事実があるので、実はIの迷宮は太古に一度発見されており、その時は不可侵条約が締結されたと見るのが妥当だろう。

問題になるのはその時点からIの執政院の長、ヴィズルは生きていたのかという疑問で、流石にそれだけ長寿ならいろいろ問題が出てくるだろう。またヴィズルの行動は明らかに支離滅裂であり、どうにも一貫性が見られない。そこで筆者は、かつての世界樹計画の生き残りは思念体のような存在であり、適当な人間に乗り移ることで世界樹を守ってきたという説を提唱する事にする。ヴィズル自身は、本当に純粋に街の発展を願う長であり、その長としての意識と世界樹計画の生き残りの意識(あるいはそれを世界樹の意識とした方が良いか)との葛藤に苦しんでいた、そう解釈すれば割と理解できそうである。

次にIIIの大異変の遥か前の出来事、白亜の供物が地球に降り注いだという話であるが、これがいつ起こったかも確定情報はない。少なくとも人類が既に存在している=世界樹計画によって(かどうかすら不明だが)世界が再生した後であろう事は間違いないのだが、具体的な情報がない以上は変動値にしてしまってよいだろう。

各作品の世界樹と真ラスボス

これはむしろIIを起点に考えた方が話が、というか筆者の捏造がスムーズになる。IIにおいて、かつて世界樹計画とは別の、人類救済のための計画である箱舟計画があったこと、それが事実上失敗したこと、そして箱舟計画からの離脱者がいたことが示されている。というわけで、ここで強引に世界樹計画は箱舟計画の離脱者が関わっていた、あるいは離脱者が始めたプロジェクトだとする。

次にIIIの世界樹だが、これはあれだ、箱舟計画からフォークした別プロジェクトがあって(ここも完全に捏造)、そこで完成した真の箱舟計画の産物=新たな環境に適応できる新人類が世界樹としてしまえば問題なかろう。白亜の供物はこの際どうでもよく、箱舟計画で作られたものだとしても、偶発的に降り注いだものだとしても、本エクストリーム解釈には影響はない。またこの解釈の元では、世界樹と(限られたものとはいえ)人間が対話でき、また人類のテクノロジーの発展に世界樹が寄与している理由にもなる。

あるいは人類救済の計画はいくつもあり、それらのうちのいくつかがシリーズでちょっとずつ小出しにされてる、という解釈でも問題ない。この場合でも、IIIの世界樹はやはり箱舟計画より派生し、成功したプロジェクトという解釈にしておいてよい。

次に真ラスボスであるが、これはそれぞれの計画において望まれず生まれた副産物という事になるであろう。IのフォレストセルとIIIの禍神第一形態が似ているのは、どちらのプロジェクトも最終的な成果物は似たようなもの(=世界樹)に収斂しており、それゆえ副産物も似たようなものになったと思えば良かろう。始原の幼子はイレギュラーだが、IIの世界樹ははっきりいってしまえば失敗作なので、そこから生まれでた者が成功作のものとは違うのは当然であろう。またモリビトが世界樹の創造物であるように、フカビト(の真祖)も世界樹の副産物である禍神の創造物とすれば、これらが人間とコミュニケーションを取れる言い訳になる。IIの翼人も似たようなものとしよう。

そしてIの世界樹の王が世界樹の秘密を守っていたのは、要するにIIIの深都の住人と世界樹がやっていたのと同じ、フォレストセルを封印し、そこに近づけさせないためだったと考えられる。レンとツスクルが世界樹の王に加担していたのは、かつて彼女らも迷宮を踏破し、結果として迷宮の深奥の化け物(=フォレストセルと同格)を目覚めさせ、街を滅ぼした事があるとかそういう事情があったからであろう。

我ながらよくもまあ憶測と曲解と捏造をここまで並べ立てられるものだと思うが、次節でこれまでのまとめを行う。

世界樹年表

これまでの筆者の曲解と捏造を全てまとめたのが、以下の年表である。

年代共通世界樹I世界樹II世界樹III
数千年前人類滅亡の危機
人類救済計画が持ち上がる
箱舟計画開始
箱舟計画より離反者出現箱舟計画難航箱舟計画よりフォーク
世界樹計画開始箱舟計画、依然として難航こちらはやや順調
ほぼ人類滅亡世界樹計画間に合わず箱舟計画、事実上の失敗
地球は荒廃状態世界樹計画、ようやく完成オーバーロードのみが生き残り、世界樹の迷宮に引きこもる計画の完了には気の遠くなるような年月が必要だと発覚
A年前新人類が文明を築く
モリビトと人類の間で盟約が交わされる
B年前箱舟計画が完了、地球への帰還を試みる
C年前白亜の供物がアーモロード近隣に降り注ぎ、世界樹と禍神が降臨する
百年前大異変が発生する
D年前エトリアで迷宮が(改めて)発見される
E年前ハイラガードで迷宮が発見される
F年前エトリアの迷宮が踏破される
現在モリビトは人類と共存アーモロードにプレイヤーパーティが到着
ハイラガードにプレイヤーパーティが到着

A〜Eの変数については、

であれば、特に問題はない。

この解釈の元であれば、三つの作品の世界樹及び真ラスボスを無理矢理関連付ける事が可能である。


2010-06-14