(……計算違いはあったが、倒せたことに変わりはない。戻るか) |
おーい、あの野郎が帰ってきたぜ。 | |
さて、いろいろ問いたださないといけないわねえ? | |
おうそうだ、洗いざらい喋ってもらうぜ。 | |
何だよいきなり。そりゃ確かにちょっと長く静養しすぎたっちゃそうだけどよ。 | |
静養ねー。キリカゼさんと2人で一体どこで何をしてたのかしらね。 | |
(……バレたか?) | |
しらばっくれようったってそうは行かねえ、キリキリ吐けや。 | |
(ここは誤魔化してみるか……) | |
ほら、だんまり決め込んでないでとっとと話しなさい。 | |
……デート。 | |
へー、あんたもデートとかするんだー。そんなこと考えもしなかったわ。 | |
ってかお前デートってそれ浮気じゃね? | |
だから違うっつってんでしょーが! | |
しっかしデートに俺の突剣をわざわざ持っていったのかー。すげえセンスだなあ。 | |
いや、行き先がちと危険だったし、護身用に一番強い武器をな。 | |
それでそのキリカゼさんは昏倒して戻ってきたわけだけど、一体ナニをしていらしたのかしらね? | |
……途中で気分が悪くなったっていって、その。 | |
ところで俺らの留守中にえらい強力な銃が仕入れられてたんだが、あれ誰だろうなー? | |
あれの素材ってクラーケンの条件ドロップでしょ? それを取れるギルドなんて聞いたことないわねー。 | |
ってか俺のジラハボックになぜかLUCが四つも鍛冶で付けられてるんだが、誰だろうな犯人は? | |
……お前ら全部気がついてんじゃねえか! | |
さあ、あんたが具体的に一体何をしてたのか、洗いざらい吐いてもらうわよ。 | |
……喋るから鉄拳制裁はやめてくれよ? |
……確かに「いつかきちんとエルダードラゴンに挑む」とは言ってたけど。 | |
なあおい、どんだけバカなんだこいつは? | |
どこまでも、果てしなく、それこそ迷宮の最長不倒バカね。 | |
……よくそんなのと長く寝食を共にできるもんだなー。 | |
バカじゃなくてストイックと言ってくれよ。 | |
どっちも同じでしょ。それでエルダードラゴンにはどうやって挑んだわけ? |
これが俺の対エルダードラゴンに考案した装備とスキルだ。 | |
サブでパイレーツねえ。ってお前がサブでパイレーツ取ったら俺の立場が! | |
それであたしらに極秘で行動しようとしてたと。 | |
そうそう、俺はお前らを気遣ってだな。 | |
それは気遣いじゃねーだろ! スタンドプレーだろ! | |
俺のはスタンドプレーじゃなくて計算なんだけどな。 |
もう大体わかったわ。分身すれば頭封じの確率が上がるって理屈でしょ。 | |
確かに俺一人じゃ完全に封じんのは絶対に無理だ。これが一人で挑んだ理由か。 | |
ちなみにLUCが64だとハンギングを五発撃っても封じられないことがあった。 | |
だからわざわざ鍛冶をね。ってジラハボックの素材って、あの宿木のドロップでしょ? | |
おうそうだ、普通に戦ったらまず俺らじゃ手に余る相手だったぜ。 | |
えーと、雲隠して分身して多元抜刀で倒した。 | |
聞く限りじゃとんでもない技ね、多元抜刀。ところでエルダードラゴンには使えなかったの? | |
無理だったな。どうしても分身四体が限界だし、多元抜刀取ると頭封じの手段がなくなるし。 | |
だから雲隠で粘りつつ、ハンギングで攻めたわけか。 | |
正確には、こんな感じのルーチンでやってた。 |
これで割とパターン化して戦えてた。……前半戦はな。 | |
それじゃ後半戦は? | |
実は二つほど計算違いがあって、それでちとヤバいことになった。 | |
何なの、その計算違いって。 |
この記録よりも大分前にだけど、キリカゼが落ちちまった。 | |
ネクタルは持っていかなかったの? | |
いや、俺もまさかキリカゼがやられるとは思ってなかった。 | |
それが計算違いの一つ目か。 | |
半分正解。実際にはキリカゼ抜きでも勝てると思ってたから用意してなかった面もあった。 が、どうもエルダードラゴンは脚封じ状態でないと耐性が倍になるらしくてね。 | |
それじゃ、脚封じ状態だとハンギング+イーグルアイで200以上出せたわけかー。 | |
まあ、それが良かったかはまた別の話なんだけどな。 |
もう一個の計算違いは後半戦で追加された行動パターン。 |
後半戦では星術属性が加わり、さらにスーパーノヴァが予測できなくなる。 | |
それじゃ完全ランダムって事? | |
多少の規則性はあったみたいだけど……まあ常に頭封じが必要になった。 | |
はー、よくそれで助かったな。 | |
実際には一発スーパーノヴァを喰らってほぼ壊滅したよ。 | |
へ? それじゃスーパーノヴァを耐えられたの? | |
耐えたってか、避けた。流石にここまでAGIとLUCが高いと必中ではなく90%程度の命中率かな。 | |
そこから立て直して、123ターンもかけて倒したと。 | |
古竜の息吹で俺の2〜3ターン分のダメージを回復されるからな。頻度自体は低かったのが救いだ。 | |
普通は途中で投げると思うけど、あんたキリン相手に240ターン以上粘った前例持ちだものね。 | |
まあ、そういうことだ。苦労したよ、まったく。 | |
それじゃ、次はあたしらの出番ね。 | |
え? | |
だって今回エルダードラゴンにセメントマッチで勝ったのはあんただけでしょ? このままあたしらの出番がないとか、いくら何でも納得できないわ。でしょ? | |
んー、俺としてはぶっちゃけもうどうでもいいんだが…… | |
「どうでもいい」ならあたしの票にカウントさせてもらうわ。文句は? | |
(……文句言ったら殺される!) | |
2対1の多数決という民主的な方法により、この三人でエルダードラゴンに挑むことに決定ね。 | |
いや、だから多数決を民主的な手段とナイーブにイコールするのは違うというか危険だって前から…… | |
っていうか俺に関しては完全に脅迫…… | |
そういえば最近、ちょっと新しい経絡秘孔を見つけちゃってねえ? | |
……こうなったら仕方ねえな。ところで協力は誰に頼むつもりなんだ? | |
流石にキリカゼさんにこれ以上迷惑かけられないし、となるとボーグマン達? | |
いつだかのビーストキングか……いやまてそれは厳しいぞ。 | |
え、どうして? | |
いや、実はキリカゼの前にボーグマンたちとエルダードラゴンに挑んだんだよ。 そしたら封じやステータス低下が多く掛かってると古竜の息吹が多くなるようで、ぶっちゃけ詰んだ。 | |
つまり攻撃力が足りねえってことか。どんぐらいの頻度で使われてたんだ、古竜の息吹? | |
2〜3ターンに1回かな? ボーグマンはかなりの確率で封じをかけてくれるが、その優秀さが仇になった。 | |
またあたしたちの苦手科目が立ち塞がってきたわね。火力を追求するとなると、必要なものって何? | |
まずはレベルは絶対に60以上は必要だろ? ステータスもそうだし、スキルポイントも必要だしよ。 | |
ついでにアイテムが山のように必要になるはずだし、下手するとボッタクリ価格の武器も必要だろうな。 | |
うーん、いろいろ手間入り物入りね。でもエルダードラゴンに正面から挑むんだから仕方ないわ。 |