てっきり空中樹海でそのまま決戦かと思ったけど、どうも違ったようだ。 | |
いつも通り、港から大航海クエストとして受けるってこと? | |
だろうな。なーんか嫌な予感がしてきた。 | |
そんじゃ、港に戻りますか。 |
……あんまり他の連中に手出しされたくねえんだがな。 | |
別にいいじゃない、手伝ってくれるっていうんだから。 | |
で、誰が名乗りをあげてるんだ? |
なんか半分ぐらいが見てて頭の痛くなってくる面子だ。何してんだこいつら? | |
で、どいつらと組むつもりなんだ? | |
あー、最初に組んだよしみでキリカゼに頼むか。 | |
そういえば、彼女がきっかけで最初のボスを倒せたんだっけ。 | |
今回もそれが吉とでてくれっかねえ。 | |
しかしキリカゼ、レベル95とか恐ろしいことになってんな。どんだけキツい任務に就いてんだ? | |
むしろあたしらレベル低すぎない? | |
そういうところを俺たちは何とかしてきたんじゃねえか、なあ? | |
そうだな。まあ、今回も何とかするさ。 |
……!? | |
はぁ!? | |
何だこいつ、いきなり全箇所が封じられてんぞ。 | |
おい、これはかなりマズいぞ。 | |
え、マズいってどういう事? |
いきなり不発……一体何なの? | |
多分、こいつは封じが解けると即死級の攻撃を繰り出してくるんだろう。 | |
そんじゃ、封じが解ける前にラッシュをかけて倒せって事か? | |
それができるHP量じゃなさそうだけどよ。 |
ってかそれ以前にだな、全封じ状態なのに普通に攻撃してくるぜ!? | |
確認できたのは全体壊属性攻撃のクラッシュダイブと前列に斬属性攻撃のウィングラッシュか。 | |
えーと、普通にはどっちも耐えきれないわよ。 | |
アクセサリとミストで耐えるしかないな、俺たちの場合。 |
クラッシュダイブとウィングラッシュは耐えきれたけど、スーパーノヴァが無理! | |
なんだこりゃ? ダメージの桁がおかしすぎるぜ。 | |
……試しにちょっと休養して、スキルを振りなおしてみるか。 | |
? | |
えーと、シェイリンはサブでウォリアーを取って、アームブレイカーを覚えてくれ。 | |
あんたら二人は元から封じ技が使えるから、それを取るわけね。 | |
んーでも、封じはだんだん入りにくくなったような気がすんなあ。 | |
まあ、やってみるしかないだろうな。 |
なんかこいつ、面白いぐらい封じが決まるぜ? | |
多分、こいつは耐性が上昇しないんだろうな。 | |
つまり、最低でも頭を封じた状態を維持して戦うって事? | |
多分な。あとミストで耐えるにも限度があるから、普通に耐えられないとマズいかもしれない。 | |
普通に耐えるにしても、ダメージが……ってそっか、腕封じを維持して威力を殺ぐんだ。 | |
脚の方はまだよくわかんねーが、封じておいた方が良さそうだな。 | |
恐らく、全箇所封じをなるべく保って戦うことになるんだろうが……。 |
スーパーノヴァを使ってくるタイミングは固定……というか、パターン自体固定臭いな。 | |
つまりこういうこと? スーパーノヴァを確実に潰すのを優先しつつも、他の箇所の封じも続けると。 | |
そうだな。そして腕封じの上でも驚異的な威力の物理攻撃に耐えないといけない。 | |
あたしらは後衛に下がれば、多分クラッシュダイブ対策だけでいけると思うんだけど。 | |
とは言ってもよ、どうにも勝てる気がしねえんだよな。 | |
まずそもそも、奴のHPが膨大で削りきるのがかなりしんどそうだ。 | |
仮に俺が後衛に下がったら、余計火力が減って長期戦になるぜ。 | |
その上頭を封じ損ねたら、スーパーノヴァで全滅確定……これはちょっと無理じゃない? | |
そうだな、真っ正面からの力勝負じゃ勝ち目はない。 | |
うーん、となるともうちょっと強くなってからじゃないとダメって事ね。 | |
……果たして正面から戦うことだけが強さなのかな? | |
何言い出すんだよ、いきなり。 | |
確かに今までも真っ向勝負というよりは奇策の部類だったような気がするけど……。 | |
少人数の不利だとか、明らかな力量の差を、俺たちは知力で克服してきたんだ。 | |
うん、それはわかる。だから今回も、ってこと? | |
……そして俺は今まで、なるべくこの三人だからこそできる戦術を考えてきたつもりだ。 | |
そ、そうだったのか。 | |
だがそれは、裏を返せば他の連中には難しいって事だ。 | |
それはそうでしょ。だってこの三人を前提にしてるんだもの。 | |
だが、今回はちょっとそのポリシーを破る。 | |
え、それってどういう事? | |
今回の作戦は誰だってできる。もしかしたら、ギルドに登録したての新人でもできるかもしれない。 | |
おいおい、つまり誰だってエルダードラゴンに勝てるってことか? | |
多分な。確実という保証はないし、まともなやり方とも思えない。だが、勝ち目はある。 | |
でも、それが本当にできたらかなり凄いんじゃない? | |
……凄いかどうかはさておき、神にも等しいものがマヌケということの証明にはなる。 | |
真意を計り兼ねるっちゃそうだが、俺はお前に賭けてみるぜ。 | |
あたしも。っていうか、いつものことだけどね。 | |
それじゃあ、俺の指示に従ってスキルとサブクラスを取得してくれ。 |
……何これ? | |
多分だけど、本当に必要なのは食いしばりだけだ。一応シェイリンには暗黒拳も覚えてもらったけど。 | |
だから、一体何これ? 食いしばりじゃ一回しか耐えられないでしょ? | |
いいんだよ、一回だけ耐えれば。 | |
一回でいいのかよ? | |
あとこの一騎当千は何なの? これ、使うとダメージがやたら増えるんじゃない? | |
だから都合がいいんだよ。さて、俺は買出しに行ってくる。港で落ち合おう。 | |
……一体何考えてんだ、こいつは。 | |
ろくでもない事には違いないわね。 |
こいつは最初のターンは確定でスーパーノヴァを放ってくる。そのターン中にミストだ。 | |
あたしらは強斬の護符が計三つしかないから、耐斬ミストね。 | |
これで物理攻撃は凌げるけどよ、これで一体どうすんだ? | |
頭封じが解けないうちは、特に何もしなくていい。防御してても、普通に殴ってもいい。 | |
頭封じが解けたらどうすんだ? | |
まあ、その時を待ってろ。ところで奴がスーパーノヴァを使ってくるタイミングはわかってるよな? | |
4ターンめと8ターンめまでは確認してるわ。 | |
動くのは3ターンめか7ターンめだ。場合によっては、4ターンめと8ターンめにも動く。 | |
んー、別に封じスキル持ってるわけじゃねえんだけど、一体どうすんだ? |
現在7ターンめ、頭封じが解けた状態だ。 | |
次にスーパーノヴァがくるぜ!? | |
このターンと次のターンがチャンスだ。呪いの香を投げまくれ! | |
!? | |
あ、シェイリンは暗黒拳でもいい。 | |
……ああ、そういうことね。 | |
おう、俺もわかったぜ。なんつー事を考えるんだお前は。 | |
いい加減聞き飽きたな、その台詞。それと二人は、状況によらず次のターンは一騎当千な。 |
スーパーノヴァのターンに呪い成功だ。一騎当千の構えは取ってるよな? | |
うん、それは大丈夫。 | |
最高レベルの一騎当千だとダメージがすげえ増えるんだよな……なんつー作戦だ。 | |
さあ、あとはサイコロの目の出方次第だ。 |
俺は耐えた、二人はどうだ? |
あ、あたしも! |
俺も耐えられたぜ! | |
よし、全員耐えられた。これで俺たちの勝ちだ! |
60,000オーバー!? | |
すげえ、なんつーダメージだ! | |
こいつのスーパーノヴァもイカれてるけど、それが跳ね返ったらそりゃこうなるわ。 | |
しかしこうして勝ってみると、あっけねえってか虚しいぜ。 | |
……ハハハ、見たかよ。こいつ自分の攻撃でくたばりやがった。何が神だ、ざまあないぜ。 | |
規格外の攻撃力が裏目に出たって事ね。 | |
考えても見ろよ、俺たち人間を屠るだけなら、三竜程度の力で充分なんだ。 ところがこいつはどうだ? これが過ぎた力を持ったものの末路なんだよ! | |
確かにこいつのスーパーノヴァが三竜のブレス程度だったら、この戦術は成立しないわ。 | |
だよなあ。そういう意味じゃ、三竜やアルルーナの方が厄介かもしんねえな。 | |
うん、こんな方法はまず通用しないし、単なる力勝負も無理だもの。 知恵を絞って作戦を立てて、それで対抗できたわけよね。 | |
昔っからそうさ、こういう化け物は人間の叡智と勇気の前に破れてきたんだ。 人が人の身に留まる限り、それは決して変わらないんだよ。 | |
……もしかして、深王の事を言ってるの? | |
ああそうだ。仮に魔が本当に倒すべき敵なら、人間やめたあいつが倒せるはずもねえ。 それを是とした世界樹も、明らかに役者が違う。 | |
あーつまり、俺たちがやるしかねえのか? | |
別に俺たちじゃなくてもいいさ。いつか誰かが、すべてのケリを付けるはず。ただ…… | |
あたしたちが、今のところ一番そこに近いわね。 | |
そういうことだ。魔の本拠地への挑戦という果の因を作ったのは俺だしな。 |
……ケッ、わかっててやってんのか。嫌な野郎だ。 |
な、何か凄いものを貰ったわよ。 | |
「イモータル: ターン終了時に全員完全回復」とあるな……何だそりゃ。 | |
死を超越した力ね……そんなもんに頼らなくても俺たちはやっていけるさ。 | |
そういうと思ったわ。 | |
しっかし、あんな倒し方で良かったのかねえ? | |
うーん、一応は知恵で勝ったということでいいんじゃない? | |
いずれ俺たちが十分に強くなったら、その時に改めて挑めばいい。 | |
あ、また戦う気なのね。 | |
一体いつになるかはわからねえけどよ。さて、とりあえず帰るか。 |
これで一応、大航海クエストはすべて終わりか。 | |
こっちはこっちでいろいろあったわね。 | |
割と節目節目で海に出てたよなあ、俺たち。 | |
おいおい、そういう思い出を振りかえるにはまだ早いだろ。 | |
わかってるわよ、次の階層が残ってるって事でしょ。 | |
魔の本拠地か。一体何が待ち受けていやがるのかねえ? | |
さあな。鬼が出るか蛇が出るか、どっちにしろ進むしかねえよ。 |