俺は分身+雲隠+軽業の手数重視のスキルと、分身+肉弾のコンボだ。これで大体わかったろ? | |
うん、流石にね。カウンターで倒されるのを見越して、肉弾でダメージアップを図ると。 | |
あとクエストのついでに第3階層のFOEを石化させまくってたら、えらく強い刀が手に入った。 どう考えても短剣スキルを取得する余裕なんてないから、今回はこいつで普通に叩っ斬る。 | |
この装備とスキルに合わせるとなると、あたしらのやるべき事も決まってくるわね。 |
血返しの法でTPを回復、でしょ? ここまでは鉄板で確定ね。 | |
そういうこと。あとどうせ封じは低確率だし、バインドリカバリはいらねえ。 | |
じゃ、余ったスキルポイントはどうするの? | |
奴が必ず周期的に使ってくる、報いの炎対策だな。 |
炎の先見術……。あ、そうか、5ターンごとに使えば確実に一手抑え込める。 | |
俺の分身の最大の弱点は、分身したターンだからな。そこを凌げれば、雲隠でどうにかなる。 |
俺はずいぶんとシンプルにまとまってんな。 | |
ぶっちゃけチェイスさえあれば他は大していらねえからな。 | |
まあ、それが主力だからなー。 | |
あとはHP/TPブーストに全部振っといて問題ない。 | |
これで準備は終わり? | |
そうだな。あとはテリアカやアムリタをちょっと買って終わり。 よほど運が悪くない限りこれで勝てるはずだ。 |
今回の作戦は2つの段階に分かれる。前半戦はひたすら分身+チェイスで斬りかかる。 | |
HPが半減するまでは帝王の誇りがこないものね。 | |
というか、シェイリンのTPが切れる前に前半戦を終わらせる必要がある。 | |
俺のTP切れは心配しなくていいのか? | |
あー、そっちはどうしようもねえから普通にアムリタだ。 もっともチェイスのダメージ効率があるから、そんなに使う必要はないよ。 |
後半は帝王の誇りがくるから、前衛の分身+チェイスだけで基本は攻撃。 帝王の誇りの次のターンはほぼ神罰だから、そこは総攻撃+肉弾だ。 | |
そこであたしのTPを補給、ってわけね。 | |
確実に毎ターン、相当なTPを消費するからな。 | |
しかし今回、どうも引き運が相当悪かったはずだぜ? | |
あたしが何度も頭封じ喰らうし、チェイスは外れまくるし。確かについてなかったわ。 | |
それでも勝てるあたり、末恐ろしいぜまったく。 | |
……こいつは本来、俺の秘技中の秘技だったんだがな。 | |
なんだそりゃ。 | |
んなことより、クジュラの方はどうなったんだ? |
……こっちはドローか。 | |
でもまだあたしたちには余力が残ってるでしょ。 | |
流石にこの人数なら負けはねえだろー。 |
……逃げやがった。 | |
流石にこの人数相手は無理だと思ったみたいね。 | |
とりあえずこの場は凌いだけどよ、まだまだ状況は悪いぜ? | |
そうね、早く追わないと……。 |
ああそうか、先に元老院に伝えて報告して、あっちでも手を打てれば打ってもらうか。 | |
それよりこのオランピアが落としていったという鍵……月の鍵か? | |
そういえば第2階層でケトスのいた広間の先にも星の鍵があったけど、それと同じようなもの? | |
いや、こっちの方が遥に重要だろうな。 | |
おいおい、そんなことよか早く報告に戻ろうぜ。 | |
そうだったな。 |
えーと、どうもあたしたちだけが頼りみたいね。 | |
みたいだなあ。しっかしこの婆さん、百年かけてここまで辿り着いて、それでこれだもんなあ。 | |
……最悪の事態が迫ってるんだものね。いくら何でも不憫だわ。 | |
当然、ミッションを受けるだろ? | |
ああ、それは受ける。だけど、その前に会っておきたい奴がいる。 | |
え、誰それ? | |
いいから付いてきてくれ。 |
ここって断罪の間じゃない。 | |
ってお前、真祖に会うつもりなのか? | |
奴が一番真実に近いだろうからな。それに、多分一番冷静ってか正気なのも奴だ。 | |
そりゃそうかもしれないけど。 | |
だからって一応敵の親玉ってことになってる奴に会いにくるとか、お前やっぱおかしいぜ。 | |
あの時は部屋のこっち側にいたはず……。 |
いた。 | |
前に一度会ってるとはいえ、というか会ってるからこそ緊張するわね。 | |
ってかある意味じゃ、俺らの行動って海都・深都両方への裏切りに見えるだろうからなー。 |
……こいつ、何を言ってるんだ? | |
「フカビトは人間の敵に過ぎないのか」ってその親玉の野郎が言うことか? | |
いや、そうじゃない。こいつの言う「少女」ってまさか……。 | |
姫様とでも言いたいの? | |
時間的に辻褄は合うだろ。だとすると、深王の行動も頷ける。 | |
人間側の内通者がいて、それがあの姫様だと思われてるって事か? | |
あくまでも仮定の話だけど、余計マズいな、深王も本気で殺しにかかってくるはずだ。 |
……。 | |
フカビトと人間が友好関係を結べるか……。 | |
(さて、どう答える?) | |
(いやこれ難しいだろ。普通に連中は人間を魔のための贄だっつってるし) | |
(が、どうも真祖の考えは別にあるように思える) | |
(でもよ、俺ら既にフカビトどもとドンパチやっちまってるんだぜ?) | |
(……つまり、あんたの意見は「無理」か) | |
(そうなるな。そういうお前はどうなんだ?) | |
(……シェイリンに合わせるよ) | |
あたしは……無理じゃないとは思う。 |
「証」か。……何の事なんだろうな。 | |
あたしたちがそれを持ってないことは確実なんだけど、手がかりすらないわ。 | |
んー、でも一応、真祖は意外と俺たちと敵対したがってないってのは間違いないか? | |
……だといいんだけどな。 | |
これ以上居ても仕方なさそうだし、戻りましょ。 |
で、お前さんは本当のところどう思ってんだ? | |
ああ、真祖の問いかけのことか。あんたとは別の意味で難しいと思ってる。 | |
そりゃどういう意味だ? | |
もしも人間とフカビトが敵対関係になくなったとする。すると、どうなる? | |
んーと、普通に今まで深都がやってたようなドンパチはなくなるな。 | |
さて、そうなると二つほど存在の怪しいものが出てくる。 | |
ああそうか、魔の存在か。ありゃ人間とフカビトが敵対してないと存在できそうもねえ。 | |
同時に、世界樹が俺たちにテクノロジーを授ける意味もなくなるだろ。 | |
そういや、世界樹はフカビトと魔に対抗することを見返りに要求してたな。 | |
俺たちは世界樹を失い、フカビトは魔を失う……という仮定が正しいとする。 その場合、果たして俺たちは友好関係を結ぶことができるのか? | |
……それ、すっげえ無理のある話じゃねえか。 | |
俺は世界樹の加護のないところで育ったし、殺しがしたくてここに来たわけじゃねえ。 だから別にフカビトとの争いがなくなって冒険者稼業に専念できりゃ、それでいいんだが。 | |
少なくとも深都の連中は納得しそうもねえよなー。あいつらすげえ過激派じゃねえか。 | |
フカビトにもそういう過激派はいると思った方がいいだろ。 | |
どうにも厄介だな、こいつは。 | |
何にせよ今は深王を止めるのが先決だ。ミッションを受けよう。 |