……。 | |
……。 | |
……。 | |
……何だこれ? | |
……あんたが知らない物をあたしが知ってるわけないでしょ。 | |
ここ海の中だよな? 何で都市が存在してんだ? | |
もしかして、ここが深都? | |
さっきの階層を鑑みるに、その可能性は高いと思うけど……。 |
げっ、オランピア? 俺たちを排除しにきたのか? | |
……いや、どうもそうじゃなさそうだ。 |
……。 | |
……。 | |
……。 | |
……どういうことだ? | |
……だからあたしに聞かれても困るってば。 |
おいおい、「人類のため」とか言われちまったぜ? | |
信用できるわけないでしょ、さんざっぱらあたしたちを罠にハメておいて! | |
ああそうだ、手前のしてきたことを胸に手を当てて思い出してみろ。 ……と思う一方で、海底にこんな都市があることが知れたらどうなるかわからない。 | |
う、まあそれはそう思うわ。 | |
とはいえ、シェイリンの言う通り信用できないのも確かだしな。 | |
うーん、それじゃ俺たちどうすりゃいいんだ? | |
俺はみだりに言いふらしはしないが、常に秘密にできるかというと約束できないな。 |
やべえ、もしかして俺たちやられる? | |
ちょっと、どこかに連れていかれるわよ? | |
……牢獄にぶち込まれるぐらいならラッキーと考えておくか。 | |
って何冷静になってんだ、おい……? |
あれ、何か普通に帰してくれるみたい。 | |
てっきりぶっ殺されるかと思ったぜ。 | |
……とりあえず海都に戻るか。 |
さてどうする? | |
どうするって何をだよ? | |
元老院への報告でしょ。確かにこのまま報告していいのか迷うわ。 | |
いやお前、まずあのオランピアは今までの事件の下手人だぜ? | |
人間じゃないだろ、オランピアは。人間のような意志があるっぽいのは確かだけどよ。 | |
それがどうかしたのか? | |
明らかに機械であることを踏まえると、あれを作った奴がいるってことだろ? | |
だからそれがどうしたんだよ? | |
責任があるのはオランピアを作ったか、あるいは今現在管理してる奴だろ。 | |
そいつをしょっ引けばいいだろ。 | |
……それって深王にならない? | |
まあ、そういうことだ。 | |
じゃあ深王をしょっ引けば……ってあれ? | |
深都の詳細はわかんなかったけど、あれ普通に都市として機能してたよな? | |
そこの支配者を捕まえるとなると、かなりヤバい類の政治問題ね。 | |
……えーと、つまり下手を打つとどうなるんだ? | |
さぁ? あの気性の荒い婆さんのことだ、宣戦布告してもおかしくないんじゃないか? なにせ、オランピア捜索に対しても一個中隊を派兵したからな。 | |
……それってヤバくね? | |
滅茶苦茶ヤバいわよ! | |
……しばらくだんまり決め込んどくか? | |
そ、そうね。あとでオランピアに詫びを入れれば、ここの調査ができるかもしれないし。 | |
……俺たちはあそこで何も見なかった、深都なんてなかった。いいな? | |
お、おう。 |
(はー、百年も待ってた人に嘘つくのは気が重いわ……)って百年? | |
どんだけ長生きなんだよ、この婆さんは? | |
ちょっと待てよ、百年以上生きてるってことは……。 | |
なんだ? | |
(大異変の当事者の可能性が高いだろ!) | |
(……おい、それじゃごまかしが効かなくねえか?) | |
(いや、当初の予定どおり、ここはしらを切り通そう。) すまん婆さん、何も見つからなかった。 |
チッ、監視付きだったか。重要任務だから当然といえばそうだけどよ。 | |
あたしたちも元老院を信用しきってないけど、そこはあっちも同じだったって事ね。 | |
ちょっと待てコラアアアァァァ! 見てたんなら手伝えやあああぁぁぁ! | |
落ち着けって。明らかに悪いのは虚偽の報告をした俺たちだ。 | |
これは処分を覚悟した方が良さそう……。 |
あれ、お咎めなしか? | |
それどころか深都探索の理由を教えてくれるって。 | |
どうも噂の姫様から直々に話があるらしいぜ。 |
そんで、理屈はわかんねーけど深都の同胞たちが心配だっつーわけね。 | |
その同胞たちに妨害されてたって事を考えると、ちょっと嫌な気分にならない? | |
深都の連中の事情はわかんねーけど、確かに気分のいい話じゃねえよなあ。 |
うーん、今までの犠牲を考えると、あっさりと友好関係とかいえないんじゃないの? | |
ま、お偉いさんたちは俺たちとは考え方が違うんだろうな。 |
(それよかこっちの姉ちゃんが親書と進物の担当らしいんだがよ) | |
(こんな頭と尻の軽そうなのに任せて大丈夫なの?) | |
(お前さりげなく酷いな。でも同感だぜ) |
ああ、やっぱ俺らにお鉢が回ってくんのなー。 | |
またオランピアに追い返されないと良いんだけどね。 | |
……どうにも不自然だな。 | |
へ? 何が? | |
こいつら、少なくとも深都の存在は知ってただろ? | |
うん、そうね。お婆さんが当時の生き証人みたいだし。 | |
そして今までのことを水に流して、深都と交流をしようってんだよな? | |
確かにそこは物凄く引っかかるわ。 | |
……深都に何があるんだ? |
親書を見せたらあっさりと深都にいられるようになったんだが……。 | |
何が書いてあったのか、滅茶苦茶気になるわね。 | |
なーんか俺たち、いいように使われてるよなー。 | |
しょうがねえだろ、まだ海都と深都がどういう関係で、どういう思惑なのか掴めないんだから。 | |
でもこのまま真相がわからないまま使い倒されるってこともありそう。 | |
そうならないように立ち回りたいが……とりあえずは深王に謁見か。 |
(この人もまともな人間じゃないのかしら?) | |
(その可能性は否定できないな) |
だから今晩はここに泊まっていきなさいだって。 | |
結局のところ、俺たちは話の核心からは外されてるってことでOK? | |
そうだろうな。しかしここに泊まっていくのか……。 | |
ん、どうした? | |
(バカ、俺たちはこいつらの仲間を倒してきたんだぞ) | |
(そういえば) | |
(って俺ら立場的にヤバいんじゃねえの?) | |
(……流石に心配しすぎだとは思うけどな) |
……まあ他に選択の余地はないよな。 | |
うん。それじゃ、お休み。 | |
あー、明日の朝日を拝めるのかねえ。 |
流石に考えすぎだったか。 | |
ったくビビらせやがってこの野郎は。 | |
俺なら絶対に使者全員を闇に葬るんだけどな。 | |
お前、相当人間が腐ってるな。お前が敵じゃなくてよかったぜ。 | |
深王が待ってるはずでしょ、早く行きましょ。 |
こっちはこっちで態度を変えてきてんなー。 | |
今まで冒険者を罠にかけてきたことを不問にすんのとバーターなんじゃねえの? | |
それよりあたしたちに何か頼みがあるっていうんだけど……。 |
また人類のためか。 | |
それより「フカビト」って何? | |
「深人」か「孵化人」か……あるいは「鱶人」か? | |
そのどれでも嫌な印象を受けるぜ。 | |
まあ、深都の生まれた理由も関わることだし、ミッションを受けよう。 |
「断罪の間」か……随分と禍々しい響きだな。 | |
(そこに捕えてあるっていうけど、何でさっさと始末しないの?) | |
(確かにそうだな。そんな危険ならさっさと殺っちまえばいいのに) | |
(「始末しない」のか、「始末できない」のか。そこに行けばわかることだろうな) |
……サブクラスか。まあ、これは後でいいや。 | |
それじゃ、早速迷宮に出発? | |
いや、ちょっと聞き込みをさせてくれ。 | |
なんだ、他になんか聞きたいことでもあんのか? | |
まあ、ちょっとな。 |
やっぱりな。 | |
やっぱりって、それ一体どういうこと? | |
迷宮の探索ペースと照らし合わせると、探索が成り立たなくなるぐらい犠牲者が出てるはずだろ。 | |
うん、あたしたちほどでなくても、普通に探索してれば第2階層までは割とすぐね。 | |
あと昔、カナエが迷宮から生きて帰ってこれたのも、オランピアの助けなんじゃないか? | |
つまり、深都側もやたらめったら冒険者を殺し回ってたわけじゃない、ということ? | |
だろうな。まあ、助けられなかったケースも多いだろうけどよ。 | |
しかしそうだとすると、むしろ余計に後味悪いぜ? | |
一度は助けたはずの子が、また迷宮にやってきて、その子が罠にかかったんだものね……。 | |
本当に殺すつもりで冒険者を止めなければならない理由があるのは間違いない。 それを知る唯一の方法は、まずは断罪の間に行くことだ。しかし……。 | |
? | |
いや、まずは先を急ごう。 |