ここが第2階層か。確かにまるで海の中にいるようだ。 | |
元老院のお婆ちゃんは「かつて海底だった場所に空気が留まった」と言っていたわね。 | |
それにしても、なんでそんな事になってんだろうな? 原理がわからん。 | |
酒場のなんちゃらっつー吟遊詩人の話じゃ、太古に沈んだ都市の技術らしいぜ。 | |
それにしたって不可解すぎると思うけどな。 | |
他にこの迷宮についての情報は得られなかった? | |
んー、探索の役に立つかどうかはわかんねーけど、白亜の供物とかいう話を聞いたぜ。 なんでも、大異変よりも遥か昔、この地を疫病が襲ったそうだ。 | |
その話は初耳ね。それでその疫病がどうなったの? | |
おう、何でも人々がバタバタと倒れる中、天から淡雪のような光が降り注いだんだと。 それで、それを浴びた人々は疫病から救われたっつー話だ。 | |
へー、あの街の奥の樹にそんな伝説があったんだ。 | |
ところがそいつが違うらしいぜ。なんでも、伝説の世界樹は大異変ともに沈んじまったらしい。 街にある世界樹は、そんときに残された抜け殻っつーか、残骸だな。 | |
それじゃ、もしかしたらあたしたちの進む先に、本物の世界樹があるかもしれないってこと? | |
そうかもしんねーなあ。ところでプログ、お前なんかまた反応薄いぞ。 | |
ああ、悪い。ちょっと今の話と似たような伝説を聞いたことがあってさ。 | |
それって例の噂話? 大陸の方にも世界樹があったっていう。 | |
そのことなんだけど……ん、あいつは? |
クジュラか。 | |
こいつアドバイスをくれるのはありがたいんだけどよー。素直に感謝できねえっつーか。 | |
それよりこの階層にはかつて沈んだ都市……深都の手がかりがあるらしいな。 誰も発見したことがないのにそんな話が出てくるのが胡散臭いが。 | |
どっちにしろここの探索しねえといけないんだから、その話の信憑性とかどうでも良くね? | |
そんなもん最初から考えてねえよ。問題は、誰がそんな事を吹聴してるかだ。 | |
うーん、仮に根も葉もない噂だとして、そんなのに元老院が振り回されるかな? | |
でも手掛かりすらなさそうな雰囲気だからな……まあ、先に進めばわかるか。 |
しかしさっきクジュラの野郎に言われたとおり、この階層の敵は手強いぜ。 | |
どうも陽炎で粘りつつ戦わないと危険だな。 となるとTPが足りなくなるから、煙りの末を上げとくか。 | |
でも手強いとは言っても、割と戦えてるんじゃない? | |
まあ、ナルメル対策に多少レベル上げたからな。 |
あとこのフロアのFOEはこっちが2マス動く間に1マス動く鈍足だ。 普通に逃げようとすると地形の関係でうまく行かないから、引き付けながら逃げる。 | |
それだと雑魚とエンカウントしたとき危なくない? | |
その場合はさっさと逃げる。幸い逃走の成功率は悪くないし、まあ大丈夫だろ。 |
そういえばこの子たちもこの階層に来てたんだっけ。 | |
どうも覇気がねえっつーか、何か妙じゃね? | |
ここは上の階層よりもずっと手強いのにこんな様子じゃ、ちょっと心配ね。 |
いや、そんな怖いのならこの階層の探索やめた方が良くないか? | |
おいおい、そんなストレートに言うのはマズいだろー。 もうちょっとデリカシーというものをだな。 | |
明らかに怖気づいてるだろ。 | |
もうちょっとオブラートに包めっての。 |
うーん、でもこの子だけ止めても無駄みたい。 | |
そういやそのアガタとかいうガキはどこにいんだ? | |
多分、ここからそう離れたところにはいないだろうけど。 | |
それにしても一体何がそんなに怖いのかな? 確かにここは敵も強いけど、それだけじゃなさそう。 |
……悪夢にうなされるだけでここまで弱る? | |
とてもそうは思えないな。他に理由があると思う。 | |
この子からこれ以上話を聞くのは難しそう。あとはアガタから聞き出さないと。 | |
そのようだな。いくら奴でも、このフロアにいるとは思うが。 | |
しっかしお前、「ガキのお守りはゴメンだ」とか言っといて、意外と世話好きだなオイ。 | |
……奴らがこの階層に進めるようにしたのは誰だ? | |
んー、俺たちだな。 | |
奴らが現状で問題を抱えてると知ってるのは誰だ? | |
それも俺たちだ。 | |
このまま放っといて奴らにもしもの事があったとする。俺たちに責任は? | |
……あるな。 | |
そういうわけだ。といっても、話聞くぐらいしかできそうもないけどよ。 |
なんだ、こいつも元気ねえな。 | |
そりゃ相棒が凹んでたら悩むに決まってるでしょう。 | |
だからっつって、共倒れは一番よくないぜ。 | |
それよりカナエの事について、心当たりがあるみたいね。 |
そのことがトラウマになってるのか? だとしたらここに連れてくるのはマズくないか? | |
まだ何かあるみたいね。 |
ここに連れてくれば、記憶が戻るかもしんねえってわけだ。 | |
ショック療法だな。俺はあまり奬めないが、こいつの意志は固そうだ。 |
カナエの「悪夢」って、もしかして父親の今際の際の光景? | |
それか、深層意識の不安が夢に出てきたかだな。 | |
あー、そういう考え方もあんのか。 | |
どういうこと? | |
俺はてっきり予知夢だとばかり思ってたんだがよ。 | |
不吉なこと言わないの! | |
というかゾディアックにそこまでの予知能力なんてないだろ。 | |
へ? だって占星術を使うんだろ? | |
あいつらの能力って星々のエネルギーを集めて、それを使うものなんだよ。 そこからいろいろ読み取れるにしても、そんなはっきりとした予知が、それも無意識下にできるかな? | |
たしかあたしの使う気功も、根本原理は同じって話よね。 自然界の力の流れを見定めて、それに干渉するという点じゃみんな同じ。 | |
なんだなんだ、お前らやけに詳しいな。 | |
俺たちが修行中に出会った人から、ちょっと教わったことがあってね。 その人は大陸から来たらしく、大陸では錬金術とかいうのに応用してたそうだ。 | |
ほー、大陸の方はいろいろ進んでんのかね。 | |
どうだろうな。あまり大差ないような事も聞かされたけど。 | |
それよりあの子たちどうする? しばらくはそっとしておいた方がいいかな? | |
そうだろうなそれじゃ…… | |
久しぶりに海に出ようぜ! | |
ちょっとあんた、いきなり脈絡なく何言い出すの? | |
なんつーか、ちょっと湿っぽい空気になってたからよ。 | |
……まあいいか。 | |
って何であんたも許可してんの? | |
いや、今後はもうちょい海に出てもいいぞと言った手前、いきなり断るのは、な。 | |
……ああそうだったわね。 | |
よーし、異存はねえな。それじゃあインバーの港まで戻るぜ。 |