Diary?

2009-07-27
Mon

(02:50)

DQ9 をクリアしたので、総合的な感想を書くことにする。俺はこれが初のドラクエなので、過去のドラクエと比較してどうこうなどということは書けない。あくまでも一本の RPG としての感想になる。当然だが、ネタバレ全開だ。

結論としては俺にとっては割とゲームバランス・ゲームシステムともに結構破綻したゲームで、五つ星が最高とした時に星一つで酷評する程でもないが、甘く付けても星三つが妥当だろうといった評価だ。俺は RPG に対して未知のダンジョンの踏破と強敵とのデスマッチを求めており、そして RPG における真のストーリーというのはそのゲームの世界観と前述のようなゲームプレイからプレイヤーの内面に構築されるものだと思っているので、この点では DQ9 はそれほど期待に答えてくれるものではなかった。反面、 RPG の育てゲー的側面に価値を見出し、自分の思い通りにキャラを育てて俺TSUEEEE!!をしたい向きにはかなり良いゲームかもしれない。


まず DQ9 をプレイしはじめて感じたのは、序盤が極めてかったるいということだ。最初の2時間程度を終えるまでは仲間を登録することもできず、ちょっとの戦闘を挟んで延々と三文芝居を見せつけられるのには正直辟易した。ただ、 DS の普及台数とドラクエのネームバリューから相当数いるであろう新規参入ユーザへのイントロダクションを考えると、これは仕方がないことかもしれない。ある程度以上の経験があるゲーマーならいきなりゲーム世界に放り出されても大丈夫だろうが、ゲームそのものあるいは RPG に慣れてない人にはそれじゃ酷だろう。ここはある種のトレードオフだし、まあ最初の2時間を終えればいいことだし、なんだかんだいって俺は鳥山ファンで、その鳥山デザインのキャラが動くアニメーションが見れたので、結局別にマイナスには思ってない。

仲間を登録して職業編成をアレコレ考えるのはとても面白かった。やはり RPG というのはシナリオライターの用意した仲間が機械的に入ってくるよりは、自分でキャラメイクできた方がずっと良い。というか、キャラメイクできない RPG を俺は RPG と認めない。回復手段は僧侶に一任するか、それとも旅芸人や盗賊も活用して分業してみるか? 物理アタッカーと魔法アタッカーのバランスはどうするか? 物理アタッカーは戦士と武闘家と盗賊のどれを選ぶか? こういった編成と育成の方針を考えて悩むのは俺にとっての RPG の醍醐味の一つだ(後述するが、これは最終的に期待外れな結果に終わった)。その仲間がイベントシーンで空気になるのも別に問題には感じなかった。そもそも俺は RPG においてシナリオというのはあくまでも縁の下の力持ち、ゲームへの没入度を高めるためのフレーバー程度でいいと思っているので、主人公が喋らない事もかなりの好感触だ。そのシナリオで起こった物事をどう感じるのかはプレイヤーに委ねられているべきで、プレイヤーの操作するキャラクターが勝手に三文芝居をうつのは俺の嗜好に反する。

なのでシナリオ・演出については本来なら文句は無いのだが(話が特に面白いとは感じなかったが、だからといって酷いとも思わん)、「あの」妖精サンディがすべてをぶち壊しにしてくれた。俺は本来であればこういった「お前ちょっと空気読めよ」な浮いた、あるいは壊れたキャラは嫌いではなく、変化球としてはアリだと思う。が、そのキャラが金魚の糞のごとくくっついてきて、イベントシーンで手前勝手な口上を述べるのは正直興醒めだった。実は最初は世界樹などと同様にプレイ記録のページを作ろうかとも思っていたが、完全にプレイヤーサイドの存在が喋りまくるものだからその計画は破綻した。おそらくこれはサンディをどんなデザインにしてもダメだっただろう。


シナリオの話はこれで終わりにするとして、ゲーム本体に話を移す。そもそも RPG と言えば Wiz 系のダンジョン探索メインの RPG を想起する俺にとってはダンジョンの作りが面白いかどうかはなかなか重要な問題なのだが、これについては完全に期待はずれだったと言わざるを得ない。最初からマップが表示されているために、未知のダンジョンを探索・踏破する楽しみが完全にスポイルされており、ダンジョン自体のギミックの無さも相まって、単なるボスまでの通過ポイントに成り下がっている。他の DS のソフトだと「キミの勇者」もあまりダンジョンに芸が無い部類だったが、正直な話 DQ9 はそれにすら劣ると感じた。最初から最後までダンジョンを惰性のみで通り抜けたゲームは初めてかもしれない。

そして俺が重視するポイントの筆頭である戦闘バランス・システムだが、ゲームの途中からボスを撃破したときのレベルを書いていたので、ちょっとそれをまとめてみよう。ちなみに錬金は一切行っておらず、そもそも錬金自体、シナリオの都合で酒場に戻ったときに気がついたぐらいだ。なので装備もそこまで良いものが揃えられたわけではない。

病魔パンデルム
旅芸人Lv12 / 魔法使いLv10 / 武闘家Lv11 / 僧侶Lv11
魔神ジャダーマ
旅芸人Lv14 / 魔法使いLv12 / 武闘家Lv13 / 僧侶Lv13
ぬしさま
旅芸人Lv15 / 魔法使いLv15 / 武闘家Lv15 / 僧侶Lv15
石の番人
旅芸人Lv17 / 魔法使いLv16 / 武闘家Lv17 / 僧侶Lv17
妖毒虫ズオー
旅芸人Lv18 / 魔法使いLv18 / 武闘家Lv18 / 僧侶Lv18
アノン
旅芸人Lv20 / 魔法使いLv19 / 武闘家Lv20 / 僧侶Lv19
呪幻師シャルマナ
旅芸人Lv22 / 魔法使いLv21 / 武闘家Lv22 / 僧侶Lv21
魔術師エルシオン
旅芸人Lv23 / 魔法使いLv23 / 武闘家Lv24 / 僧侶Lv23
大怪像ガドンゴ
旅芸人Lv25 / 魔法使いLv24 / 武闘家Lv25 / 僧侶Lv24
グレイナル
旅芸人Lv26 / 魔法使いLv25 / 武闘家Lv26 / 僧侶Lv26
ゴレオン将軍
旅芸人Lv27 / 魔法使いLv26 / 武闘家Lv27 / 僧侶Lv26
ゲルニック将軍
旅芸人Lv28 / 魔法使いLv27 / 武闘家Lv28 / 僧侶Lv27
ギュメイ将軍
パラディンLv26 / 魔法使いLv28 / レンジャーLv28 / 僧侶Lv28
暗黒皇帝ガナサダイ
パラディンLv30 / 魔法使いLv28 / レンジャーLv28 / 僧侶Lv29
堕天使エルギオス
パラディンLv32 / 魔法使いLv31 / レンジャーLv31 / 僧侶Lv32
闇竜バルボロス
パラディンLv33 / 魔法使いLv32 / レンジャーLv31 / 僧侶Lv33
堕天使エルギオス(2回目)
パラディンLv37 / 魔法使いLv37 / レンジャーLv37 / 僧侶Lv38

ギュメイ将軍でいきなりパラディンとレンジャーが出現してるのがポイントだ。このゲームで詰まったのはギュメイ将軍のところが初めてで、それまでは転職もせず、レベル上げもせず、適当に進めても普通にボスを倒せてしまった。反面ギュメイ将軍に対しては正攻法で戦うと勝ち目が薄く、そして DQ9 には搦め手から攻める手段が絶無に等しく、また敵の状態異常を事前に防ぐ手段も殆ど無い。その上でギュメイ将軍のやってくる攻撃に「切り上げで行動キャンセル」「魔神斬りでクリティカル」など完全に運ゲーと化すものが含まれており、レベルを上げるか転職するかの2択であった(ちなみにラスボスも同様に運ゲーだろこれという攻撃が多い。ほぼ必中の睡眠とか)。そこで初めて転職してスキルポイント稼ぎなどをやっていたのだが、どうもこの転職システムが気にくわない。

DQ9 の転職システムというのは、とどの詰まりはステータスの底上げだ。おかげでやろうと思えば魔法使いなどの防御力を思いっきり底上げする事も可能で、やりこみ次第でどんどんキャラクターが強くなっていく。そして俺はこれが気にくわない。こういった経験値稼ぎでいくらでもキャラクターが強くなると、戦闘が勢い火力勝負のデッドリーなものになりがちで、的確に敵の行動を封じて搦め手から攻めるような戦いや、敵の編成に応じたスキルのチョイスなどが無価値なものになってしまう。実際のところ DQ9 は正面からの殴り合いを推奨する戦闘システムで、正面から殴り合うよりも回りくどく戦って後ろから刺す戦いが好きな俺は多いに不満を感じる。おそらくさらにやり込めば別の解法も見えるのだろうが、あまりにもやりこみがマゾ作業に過ぎるとも思う。

途中で急激に戦闘の難度というか理不尽さが上がり、そこへの対処方法が経験値稼ぎなのだが、それまでは特に経験値を稼ぐ必要性は無い。このバランスはあまり褒められたものではなく、だったら途中のボスも相応の歯ごたえにしないといけないと思う。ここが DQ9 に感じる最大の破綻ポイントで、恐らくキャラ育成で俺TSUEEE!!をさせたいのだろうが、特に育成の必要がない戦いが延々と続く。ここで途中のボスがもっと強ければ、もっといろいろ転職して、経験値稼ぎをしてから挑むという流れになったはずなのだが、まったくそういう流れがあるとは思えなかった。最初からキャラ育成を楽しんでる人にはそれでもいいのだろうが、俺TSUEEE!!なパワーゲームが嫌いでややこしめな連携狙いのパーティが好きな俺などは、まったく育成のモチベーションがわかなかった。

散々面倒だと言われているクエストは、確かに面倒ではあるが、経験値稼ぎのついでに受けて、単純作業になりがちな経験値稼ぎのモチベーションの足しにするという遊び方をすれば良いので、面倒だからと言って叩くのはお門違いに感じる。もっとも上級職への転職クエストは例外で、ここは完全なるクソだと断言したいが、それを除けばあとはクエストの報酬なんぞついでもいいところだと思う。この辺りはセブンスドラゴンとまったく同じ方向性で、そして逆の理由で失敗していると思う。

先に述べたようにクエストは単なるモチベーション維持のためのオマケだと俺は思うのだが、セブンスドラゴンは経験値を稼いで俺TSUEEE!!なゲームでは全くなく(そういう遊び方するとつまらんと思う)、世界観の補強以外にクエストの存在意義がまったく感じられない(なので全然やってない)。対する DQ9 は殆どのケースにおいて経験値稼ぎの必要がなく、稼ぐ必要が出てきた頃には普通にメタルスライム系を淡々と狩っていた方が効率がいい(魔獣の洞窟ではぐれメタル狩りとか)。なんにしろゲームの終盤は寄り道よりもクリアの方に意識が行っているので、経験値稼ぎのついでにクエストでも受けるなんて事には序盤から中盤に比べてなりにくいと思うのだ。

恐らく製作者側の意図としては、クエストをこなしたり通信プレイで仲間とワイワイ遊んでるうちにレベルが上がり、そのレベルでもって強いボスと戦わせようというものだと思うのだが、少なくとも俺はこの程度の難度のボスでは到底キャラを育てようとは思えない。もちろん DQ9 を難しいと感じる人もいるだろうし、そういった人には経験値稼ぎを中心にクエストやら通信プレイなどが上手くかみ合って、やり込むモチベーションが沸いてくるフィードバックループが発生しているケースがあるのではないかと思う。だが残念ながら、俺にはそのフィードバックループは発生しなかったようだ。


賛否両論のシンボルエンカウントだが、これはゲームバランスの調整をプレイヤーに委ねる措置だ。実際のところ普通のランダムエンカウントの場合、多分もっと高いレベルで進むことになって、極めて温いゲームになった可能性もある。そしてちょっと敵との戦闘を回避しすぎたと思ったら、経験値稼ぎのカモと効率よく戦う事もできる。なので俺はシンボルエンカウントは特に否定しないが、やはり根本的に戦闘に緊張感が無いのが致命的だ。恐らく DQ9 を難しいと感じてる人の幾ばくかは、タルい戦闘を回避した結果として低レベルアタックを意図せずやってしまっているものと思われる。そこから前述のフィードバックループに入り込めれば、「難しい!」から「面白い!」に評価が変わるんじゃないかと思う。

セーブデータが一個しかない事については、通信プレイの要素や DS の普及台数を考えれば、別にいいんじゃないのと思う。一家に一台の据え置きゲームと違って一人一台の域に達してる DS なんだし。不満を感じるのは一人だけで遊ぶとしても複数データを用意して進めたいという人だろうが、むしろその遊び方はゲームプレイの密度を薄める結果になって損な遊び方に思える。複数セーブができない、あるいはできてもやらないことでゲーム中の選択肢の重みが増し、それによって面白みが増すと俺は思うのだが。というか俺にとってはセーブデータを複数用意して進めるという行為は軟弱極まりなく、世界樹Iのプレイ記録に至ってはフルコンプのデータを消してやり直した。


ここから先はゲーム本編というよりもインターフェースの話。実はインターフェースにも多いにストレスを感じていたんで。

DQ9 に限った話では無いが、休息を取る行為とセーブをする行為の間に何ステップもあるのは我慢しがたい。素直に宿屋でセーブさせろというのが、初めてドラクエに触れての正直な感想である。エルミナージュでも一旦街の外に出ないとセーブできないのがちとアレだと思ったが、あっちはボタンを数個ポンと押すだけで良かったのでまだ気にならなかった。ドラクエの伝統なのかも知れないが、その伝統がまったく面白くないというのが本音である。

それでセーブポイントの教会だが、セーブしたあとにBボタンを連打してたらゲームを終了し出したのには思わず閉口した。Bボタンというかキャンセルボタンには、処理の取り消し・巻き戻しなど、積み上げられた状態遷移のスタックを元に戻す操作があてがわれるべきなので、この仕様はおかしい。恐らくBボタンには「いいえ」を割り当てるというデザイン上の決定があり、問題となった部分では「まだゲームを続けるか?」という選択肢が出てくるので、そこでBボタン連打してるとゲームを終了してしまうという事なのだろう。

だったら質問文を「ゲームを終了するか?」にして「いいえ」にフォーカスを当てておけば、たとえBボタンだろうがAボタンだろうが、適当に押してもいきなりゲーム終了にはならない。そもそもゲームをやめたいなら電源を切れば良いので、この機能の存在自体がナンセンスだ。

隊列が酒場でしか変えられないのも問題がある。 DQ9 では敵が一体しかいない場合の単体攻撃や全体攻撃など、選択の余地の無い行動についてはそのコマンドを選んだ瞬間に対象の選択まで自動で行われる。これは小さな親切大きなお世話という奴で、対象の数によって必要なボタンを押す回数が異なるので、むしろ操作のテンポは悪化する側面がある。特に隊列の最後尾に僧侶などのヒーラーがいる場合、うっかり通常攻撃を選んだときに確実な破滅が待っている。そういった悲劇を防ぐには僧侶などは隊列の先の方に持ってくることが必要なのだが、この問題に気がついたのが酒場から離れた後だと非常にストレスになる。


最初に書いた通り、俺にとっては結構破綻したゲームだった。キャラメイクと育成システムを手探りでやってるうちは割と面白かったのは事実だし、一部のボス戦などで敵の戦力を分析して突破に必要な能力を考えるのも楽しめたといえばそうだが、戦闘システムの底が見えるにつれ、ただダルいだけのゲームに成り下がって行った。これまた繰り返しだけど、経験値やアイテムを稼いで自分好みのキャラを作るのが RPG の醍醐味の人にとっては、キャラの見た目は変わるし、そのキャラが戦闘中は動き回ってくれるし、やり込む要素は多いし、とても良いゲームの可能性はある。そういったやり込み要素で楽しませるという方向性は別に否定しないが、国民的 RPG を標榜するなら本編の戦闘・ダンジョン探索がもっと面白くても良かったんじゃないかと思う。

プレイ時間は大体32時間だが、ギュメイ将軍まで到達するのにかかったのが20時間で、その後のレベル上げなどでの停滞でやたら時間がかかったのが特筆すべき所だろう。もちろん試行錯誤の時間も含まれてるし、レベルがギリギリだと戦闘の時間が長引くのもそうなのだが、それ以上に経験値稼ぎが面倒で、はぐれメタル狩りの情報を仕入れてなかったらもっと大変だっただろう。

これまた俺個人の嗜好なのだが、経験値さえ稼げば OK なゲームの場合、最適解を簡単にチョイスさせないために経験値稼ぎがマゾくなるのが気にくわない。レベルの上限が途中で頭打ちになり、パーティ編成やスキルの振り分けで勝負させるゲームであれば、最終的にレベルの価値がたいしたこと無くなるので、景気良く稼ぎポイントを設定して経験値を稼がせる事が可能となる。「レベルカンストすれば余裕」ではなく「レベルカンストして最終決戦のスタートライン」程度の調整なら、マゾくて単調な経験値稼ぎの負荷は減ると思うんだが、どうもそういったゲームの需要は限られているようだ。


あとこれはまったくもってどうでもいいけど、 Amazon で星一つの酷評レビュー投稿してる連中の大半は実際にちゃんと DQ9 プレイしてないだろ。

(22:32)

DQ9 の感想の補足。ちょっと期待とは違っていた転職システムだが、魔法引き継ぎ不可にした部分は評価したい。それができたらそれこそ万能キャラを作れてしまうわけで、一人遊びするにしても通信して協力するにしても、万能キャラというのは作った直後は達成感があるけど使っていて面白いかは疑問だからな。特に多人数で集まったのに全員やることがまったく同じというのは、間違いなくその場で冷める。

「キャラメイクできないとか RPG じゃねえ」ならその他多くの RPG はなんなのだという話だが、それこそいわゆる JRPG じゃねえの? 俺はキャラメイクしてダンジョンに潜ってみたいな古典的 RPG とストーリーとキャラクター主導の JRPG は割と分けて考えてる。俺の好みは明らかに古典的 RPG だが、別に JRPG がダメとは思わないし、中には面白いものも当然あるだろう。海外の RPG はよく知らん。

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